クリニックで診察を受ける際の待ち時間の長さを不満に思う患者は少なくありません。診察内容に満足していても、待ち時間の長さでクリニックに対する信頼性が損なわれるのはもったいないことです。利用者の満足度を高めるためにも、積極的に改善を図りましょう。この記事ではクリニックの待ち時間を減らすための対策方法を紹介します。
待ち時間対策はなぜ必要?
日本医師会が実施した「第5回 日本の医療に関する意識調査」では、患者がクリニックに対して寄せる不満の第1位は待ち時間に関するものでした。その割合は44.4%にものぼっています。
また、厚生労働省が令和2年に実施した受療行動調査の結果でも、外来患者が不満と感じる1位は診察までの待ち時間です。この調査では、24.1%の人が待ち時間に関して不満を持っていることが明らかになっています。
これらの調査は、限られた医療機関を対象にしたものではありません。そのため、クリニックを問わず、患者が待ち時間の長さを不満に思っていることを示しています。直接クリニックにクレームが出ていない場合でも、患者が持つ潜在的な不満を放置しておくと不利益を被ります。
クリニック評判の低下や患者離れ、スタッフのモチベーション低下と離職率の増加、収益の減少などのリスクにつながる可能性がリスクと言えるでしょう。これらのリスクを回避するためにも、クリニック側が積極的に待ち時間対策を講じる必要があります。
まずは患者さんがリラックスできる空間を作ろう
患者の不満を緩和するためには、まずクリニック内をリラックスできる空間にすることが大切です。リラックスできる空間づくりのためにできることを、順番に見ていきましょう。
Wi-Fi・雑誌・テレビ・飲み物を待ち時間中に提供する
待合室にWi-Fiや雑誌、テレビ、飲み物のサービスを提供するなどして、待ち時間を快適に過ごせるよう工夫しましょう。そうすることで、患者のストレスを軽減できます。
レイアウト改善
予算に限りがある場合でも、レイアウトの改善であれば実施しやすいでしょう。待合室の椅子の配置を見直し、ゆったりとしたスペースを確保することで、患者がリラックスできる環境を作ります。簡単に移動できる家具を使い、患者が座りやすい配置にすることも効果的です。
自然光の活用
また、自然光の活用も有効です。窓を活用して自然光を取り入れることで、明るく開放感のある空間が作れます。自然光は患者のリラックス効果に寄与し、ストレス軽減につながります。
BGMの導入
リラックスできるBGMを導入することもおすすめです。リラックス効果のある軽音楽や自然音を低コストで導入し、待合室に流すことで、患者の緊張をほぐせます。適切なBGMは、患者が待ち時間をより快適に過ごせるようにします。
絵本・おもちゃを用意する
子供連れの患者が多いクリニックでは、簡単な絵本やおもちゃを用意することで、親子が待ち時間をリラックスして過ごせるようになります。低コストで実施できるため、予算を抑えながら効果を期待できます。
資料・ビデオを待合室で流す
健康教育や予防医療に関する資料やビデオを待合室で提供することで、待ち時間を有効に活用できます。具体的には、クリニックの壁に、健康に関する豆知識や予防医療の情報を掲示するボードを設置する施策が挙げられます。
これにより、患者は待ち時間中に健康に関する知識を得られるため、退屈さを感じにくくなるでしょう。クリニックの最新情報やスタッフ紹介などを掲示することで、患者とのコミュニケーションが深まり、親近感を持たせることもできます。
待ち時間を患者教育にあてることは、クリニック側にもメリットがあります。患者が正しい知識を身に着けることで、医療に関する理解の促進や健康に関する意識改善をサポートし、治療に対して協力的になることが期待できます。
システムや運営体制を変えるのも大切!
最後に、システムや運営体制についてみていきましょう。
診療待ちをストレスに感じる場面とは
患者が診察を待つ時間をストレスに感じる具体的なケースは、予約時間を過ぎても呼ばれない場合や、会計までの待ち時間が長いといった場合です。
待ち時間が長い場合でもあらかじめおおまかな待ち時間がわかっていれば、呼ばれるまでの待機時間を有効に使うこともできます。しかし、待ち時間がわからないと、待機のためだけに無駄な時間を費やすことになってしまいます。
不透明な待機時間の解消に有効な施策
不透明な待機時間の解消に有効なのが、予約システムの最適化やリアルタイムでの待ち時間の情報提供です。患者が自分の都合に合わせて診察時間を予約できるオンラインシステムを導入することで、来院時間が分散され、待ち時間の緩和につながります。
また、予約時に診察の詳細(検査が必要か、薬の処方のみかなど)を入力してもらうことで、診療時間を予測しやすくなり、診察に必要な時間枠の管理も容易になるため、無駄な待ち時間を減らせます。
また、自動精算機導入も有効です。自動精算機を導入することで、患者が自分で会計できるため、会計待ちの時間が大幅に短縮されます。これにより、待ち時間に対する不満が解消され、クレームの発生を防げるでしょう。
自動精算機は待ち時間の解消以外にも、料金に対する不透明さの不安解消やプライバシー保護にも効果があります。患者自身で事前に提示された料金と照らし合わせながら支払いできるため、クリニックや診療内容に対して納得感を得やすくなります。
スタッフも会計業務から解放されることで他の業務に集中できるため、より丁寧な接客が可能になるというメリットも得られるでしょう。また、業務効率の向上により、クリニック全体の運営のスムーズ化も期待できます。
まとめ
患者がクリニックに感じる不満の第1位は、待ち時間の長さです。この不満をそのままにしておくと、経営に大きな影響を与えるリスクがあります。待合室のレイアウト変更や自然光の取り入れ、適切なBGM、雑誌や充電ステーションの設置などで、患者がリラックスしながら有効に待ち時間を過ごせる空間づくりが可能です。また、待ち時間を減らすための施策として、予約システムの最適化やリアルタイムでの待ち時間提供、自動精算機の導入も効果的です。クリニックの運営をより良いものにするため、ぜひこれらの対策を検討してみてください。