クリニックではスタッフ不足が深刻化しています。この記事では、医療の質が下がり、患者満足度も低下する悪循環に陥る前に、現場でできる具体的な工夫と対策について解説します。人材確保と定着の両面から取り組むことが重要です。クリニックの人手不足を解消したい方は、ぜひ最後までご一読ください。
スタッフ不足が起きる原因
医療業界全体でスタッフ不足が深刻化していますが、その背景には構造的な問題があります。看護師の有効求人倍率は2.20倍と、全職業平均の1.19倍を大きく上回っています。これは求職者よりも求人数が多い状態を意味し、人材確保の難しさを示しています。
高齢化で需要増加
高齢者の増加により医療ニーズが高まっています。2025年には国民の5人にひとりが75歳以上となり、超高齢化社会に突入します。訪問診療や在宅医療の需要も増え、限られた医療スタッフに負担が集中する状況が生まれています。医療サポートを必要とする高齢者層が増加する一方で、医療従事者の数は充分に増えていません。したがって、ひとりあたりの業務量が増加し、スタッフの疲労が蓄積しやすくなっています。
離職率の高さ
看護師の離職率は11.6%で、新卒看護師では10.3%にのぼります。業務負担の大きさや人間関係の問題から、せっかく採用したスタッフが定着しない現実があります。長時間労働や休暇の取りづらさ、給与水準への不満などが主な離職理由です。とくに慢性的な人手不足のクリニックでは、ひとりあたりの業務量が多くなり、心身ともに疲労が溜まってしまいます。また、スタッフの入れ替わりが頻繁に起こると、残ったスタッフの負担がさらに増える悪循環が生まれます。
他施設との競合
介護老人保健施設や訪問看護ステーションなど、看護師資格をもつ人材の需要が高まっています。よりよい条件を求めて転職しやすい環境が、クリニックの人材確保を難しくしています。医療分野の人材獲得競争が激化する中で、クリニックは大規模病院や介護施設と比べて待遇面で劣る場合があります。したがって、優秀な人材が他の施設に流れてしまうケースが増えています。
クリニックのスタッフ不足を引き起こす問題
スタッフ不足は単なる人員の問題ではなく、医療現場全体に深刻な影響を及ぼします。放置すればクリニック経営にも関わる事態となります。
診療の質が下がる
ひとりあたりの業務量が増えると、患者への説明が不十分になったり、待ち時間が長くなったりします。心の余裕がなくなり、丁寧な対応が難しくなるのです。患者とのコミュニケーション時間が減少し、診察が流れ作業のようになってしまう恐れがあります。また、受付や会計での手続きに時間がかかり、患者の不満が高まる原因となります。医療サービスの品質低下は、クリニックの評判にも直接影響します。
事故のリスク増加
時間や心の余裕がなくなると、確認不足やミスが起こりやすくなります。常に緊張状態で過ごしていると心身に疲労が溜まり、集中力が低下します。平常時であれば問題なくできていた仕事がスムーズにできなくなることも考えられます。医療現場でのミスは患者の健康や命に直結するため、充分な人員確保が必要です。業務ミスが発生すると、ミス修正のために人手が必要になり、さらに人手不足の悪循環に陥りやすい状況となってしまいます。
職場の雰囲気悪化
忙しさから同僚を助ける余裕がなくなり、ギスギスした雰囲気になります。スタッフ全員の手が塞がっている状況では、お互いに協力しながら業務に当たることが難しくなります。それが患者にも伝わり、クリニックの評判低下につながる悪循環が生まれます。スタッフ同士の関係がギスギスしているように見えると、診察を受ける際に不安を感じてしまう患者もいます。近年はインターネットでクリニックの口コミを調べてから来院する患者も増えており、悪い評判が広まると新規患者数の減少につながる恐れがあります。
スタッフ採用を成功させるには
スタッフ不足を解消するには、効果的な採用活動が欠かせません。求める人材を明確にし、適切な方法で募集することが重要です。
募集条件を見直す
近隣の医療機関と比べて労働条件が見劣りしないか確認しましょう。給与だけでなく、勤務時間や休日、福利厚生も応募者が比較する重要なポイントです。よりよい人材を確保するためにも、近隣医療機関の労働条件を調べて見劣りしないように設定していく必要があります。賃金が高ければ必ずよい人材が集まるとは限りませんが、低く設定した時より応募者数ははるかにアップします。また、夜勤手当や残業手当の額を引き上げると、医療スタッフは自分がしっかりと評価されていると感じ、労働意欲が向上しやすくなります。
理念に共感する人
スキルや経験だけでなく、クリニックの方針に共感してくれる人材を選びましょう。理念を共有できるスタッフは、長く働いてくれる可能性が高まります。面接時には、求めている人材についてしっかりと説明すると同時に、応募者がそれに相応しい人材であるかどうかを見極めることが大切です。どのようなクリニックを目指すのかという理念を明確にすると、おのずとクリニックはひとつの方向を向き、開業後の運営もしっかり軌道に乗っていくでしょう。経験値の観点から少しもの足りなさを感じる人でも、理念に共感してくれる人であれば積極的に採用を検討する方法もあります。
複数の媒体活用
求人サイトやハローワーク、自院ホームページなど、複数の方法を組み合わせると幅広い人材にアプローチできます。それぞれの媒体に特性があり、どのような人材を採りたいかにより使い分けるべきです。自院ホームページには新規スタッフ募集ページを設けておくと、他媒体で求人を見た応募者がそのクリニックについての理解を深められます。募集時期は開業の半年前から始めるのが理想的です。開業準備と研修目的で開業1か月前をめどに働き始められるように準備します。よい人材ほど退職に時間がかかるため、余裕を持った採用活動が必要です。
まとめ
クリニックのスタッフ不足は、採用と定着の両面から取り組む必要があります。働きやすい環境を整え、スタッフが長く働きたいと思える職場づくりが経営安定の鍵となります。適切な人員配置により業務負担を軽減し、コミュニケーションの機会を設けると人間関係の改善にも努めましょう。医療の質を保ちながら持続可能なクリニック運営を実現するために、できることから着実に改善を進めていくのが大切です。